車いすダンスとは

 なんらかの理由により、車いすに乗って踊る方が都合のよい人と、立って踊る人がペアを組んで踊るダンス。しかし、車いす同士で踊るダンスも含まれます(デュオといいます)

 
魂のパフォーマンス2013より

◎車いすダンスの社会的役割

魂のパフォーマンス2013より
魂のパフォーマンス2013より
  • 年齢、国籍、男女、障がいの有無を問わず、どなたでも楽しむことができ親善交流の場に有益です
  • 少子高齢化の時代に、私たちは何らかの福祉的な役割を求められるようになります。車いすダンスを通して、車いすの取り扱い方や車いすの方々の気持ちや不自由さを学び、その知識を社会に還元できます
  • 車いすダンスを学び、多くの人々に勇気と感動、活力を与えることができます
  • 車いすダンスは助け合ってこそ成り立つダンスです。優しい街づくりやバリアフリーな社会の創造を前進させることにつながりノーマライゼーションの実践となります
  • 障がいがある人の社会参加を可能にし、生きがいづくりや積極性の向上に役立ちます
 

◎車いすダンスの歴史

  • 1960年代、ヨーロッパで生まれたダンスで、当時ヨーロッパでは、戦争やウインタースポーツ、交通事故などが原因で、障がいがある人たちが多く、車いすの人同士でダンスを楽しんでいた
  • 1970年頃、障がいがある人同士のダンスを見て何とか健常者と一緒に踊れないものかと考えた自らもダンス教師の資格を持つミュンヘン工科大学のクロムホルツ博士が、自校で障がいがある学生を含めた学生たちと研究を重ね、社交ダンスが踊れる車いすダンスを確立する
  • オランダでも、自らもダンス教師の資格を持ち、かつ、障がいを負ったバンヒューテン女史は、自国各地に、車いすダンススクールを創り、ヨーロッパの組織作りを成し遂げた
  • 1973年、クロムホルツ博士の尽力により、国際車いすダンス連盟を設立。自ら会長に就任
  • 日本には1991年頃、ヨーロッパから導入

たまたま社交ダンス東部支部の四本信子氏がヨーロッパでこのダンスを目にし、2週間研修を受け日本に持ち帰る。社交ダンスのネット網で普及を図る。1993年、連盟理事国に加盟

  • 広島県では1997年4月スタート

 1991年秋、仲井は出張先の関東地方でこのダンスを知り、何とか広島でも・・と考えた。

 連絡先を入手した翌日、突然、黒瀬趙の社交ダンスのインストラクター・鍬田氏が、車いすダンスを始めたいとして仲井が勤務する広島市心身障害者福祉センターに来館、一緒に1997年4月スタートさせる。当時レッスンは月1~2階であった。2年後、鍬田氏が事故死。4ヶ月後に控えた「まなびピア」への出演を果たすため、仲井は人集めとダンス指導に奔走。

 その後、日本車いすダンス連盟を脱退し、連盟へ会費を納めることもなく、社交ダンスに限らずさまざまな創作ダンスを発表するようにした。レッスンも週3回とし、会員も増えていった。重度障がい者が多く、競技を目指さず、ダンスを志す人の気持と命を大切に、地域を中心とした活動にしていく。一方、ケニアの学生との交流を機に、国際親善訪問にも本格的に着手。2004年3月、初めてロサンゼルス市を訪問以後、毎年外国訪問を続け、2012年、第9回目はオーストラリアへ。毎回広島市長のメッセージを訪問先の市長に届けている。2013年は東日本復興支援のため、石巻市を訪問。近年は年間40回程度の活動を続ける。

 

◎レッスンの順序

  • 互いに両手を組んでみる
  • スラローム(蛇行・右回転・左回転・前進・後退・直進走行)をしてみる
  • 互いに右手をつなぎ、車いすの人は左手でタイヤを後ろに回し、左回転させる
  • スタンディングパートナーも、車いすに乗ってスラロームを体験し、車いすの性質を知る
  • 音楽に合わせて、簡単なダンスにトライしてみる   
 
魂のパフォーマンス2013より

◎車いすダンスを長く続けるコツ

  • 必ずパートナーに挨拶し、楽しい会話を心がける
  • 車いすの人は、スタンディングパートナーが常に障がいに関する理解が十分だとは限らないことを認識し、援助が必要な場合は、言葉できちんと伝えること
  • スタンディングパートナーは、ダンスばかりでなく、車いすの準備や乗り降りの援助,更衣やトイレの介助、会場の掃除など、必要に応じて積極的に介助しましょう
  • スタンディングパートナーは、障がいは、一人一人異なることを理解し、相手のリスクポイントを学んでおく
  • スタンディングパートナーは、車いすの人が生き生きと動いているようにリードを心がける
  • 常に幅広い社会参加を目指す積極性を持ち、互いに助け合っていくことを心がける
 

◎ダンス用車いす

  • 種類(介助用・自走用・・・・・テニス用、バスケット用、片手駆動、電動)
 
魂のパフォーマンス2013より

◎安全に軽快に走行するには

  • タイヤの空気の充填と左右のバランスの確認・キャスター金具の固定の確認
  • 身体に合った車いすを使用する(高さ・奥行・幅・座面勾配・タイヤサイズ・重量)
 

◎クッション(必携)

  • 種類(ロホクッション・ジェイクッション・低反発クッション・アクションパッド)

  

◎ダンスのテンポ

・ワルツ(30)・タンゴ(33)・ウィンナーワルツ(60)・ルンバ(30)

・チャチャチャ(33)・パソドブレ(60)・サンバ(50)

 

◎車いすダンスのリハビリ効果

(1)身体への効果

(NK細胞活性化・上半身の筋力保持、増進・表情筋

  トレーニング・内臓、腹筋、呼吸筋の強化・脊柱変

  形予防・内臓機能の活性化)

(2)精神面への効果

(音楽による癒し・リラクゼーション・昂揚・活力

・満足・喜び・安定・自由な走行による孤独や悲嘆

   からの解放・賞賛を受ける満足・喜び・達成感

・レッスンによる忍耐力・協調性・意欲・生きがい

・仲間づくり・交流を通して喜び・積極性の向上

・社交性・社会貢献・文化交流)

◎車いすダンス実施時の注意点

(1)褥瘡予防

  ・常時車いす使用の人は20分以上続けない  

  ・褥瘡用クッションを必ず使用する

  ・プッシュアップをときどき忘れないように行う

(2)事故防止

  ・横から強引な引力を加えないこと  

  ・必要に応じ固定ベルトを使用する  

  ・転倒防止キャスターの止め具の固定や、タイヤ装着状態、タイヤの

   空気バランスの確認  

  ・ダンス用車いすへの移動時、車いすの固定保持を忘れないこと

   (特にスポーツ用車いすの場合) 

(3)レッスン中のめまいの防止

(4)片まひの人の患側肩の亜脱臼防止

  ・予め患側上下肢を固定しておく  

  ・踊る時、スタンディングパートナーは、患側上肢を引っ張らず保持するだけにする

(5)健常者は、車いすに足を轢かれないように気をつける(キャンバー角の大きい

   車いすは要注意)

(6)レッスン場所

  ・車いすがのびのびとが走行できる広さが確保できること  

  ・駐車場、洋式トイレなど必要な設備が整っていること

  ・極力、障害物は取り除く

(8)移動時の注意

  ・必要時リフト車の手配 

  ・給水や排泄時間の確保など時間に余裕を持った計画をたてること

  ・公共の乗り物を利用する場合は、予め関係交通機関に連絡しておくこと